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【無料プラグイン】無料でLensCareのようなカメラボケを実現する「Fast Bokeh for After Effects」

【無料プラグイン】無料でLensCareのようなカメラボケを実現する「Fast Bokeh for After Effects」

Depth Mapに対応したカメラボケ(被写界深度)のプラグインは「LensCare」がメジャーです。見栄えの良いボケを作るには必須なのですが、値段がちょっと高いですよね。(3万円弱)

LensCare並みの高画質なカメラボケを実現する無料プラグイン「Fast Bokeh for After Effects」がリリースされていたので試してみました。Depth Mapにも対応し、動作も軽く使いやすいです。

【2019.9.29】Pro版がリリースされたので、詳細を追記しました。

 

そもそもなぜ「カメラボケ」プラグインが必要?

After Effects(以下、AE)の標準機能でもカメラボケ(被写界深度)は設定できますが、以下の問題があります。

  • 根本的に画質面で劣る
  • そもそもAEの3D空間でCGを作るのが困難(複雑、チープ)
  • 外部のソフト(3DCG等)で作成した素材を合成した場合、ボケを足す際の標準エフェクトが低品質

AEは2Dのモーショングラフィックスは得意ですが、3Dはあまり得意ではありません。3D空間を編集するのには向かないインターフェイスですし、画質も低く、その割に動作が重いです。

そのため、3D表現をするならプラグインの「Element 3D」や他の3DCGソフトから持ち込むことになり、その際に「カメラボケ」を付加するプラグインが活躍します。そしてそのようなプラグインではFrischluftから販売されている「LensCare」が業界標準と言われています。
※CINEMA 4Dとの統合によって3Dは扱いやすくなりましたが、まだまだハードルが高い印象ですし、標準で付属するCINEMA 4D Liteでできることは限られています。

今回紹介する「Fast Bokeh for After Effects」は、AEのプラグインを複数販売するRowbyteから無料配布されているプラグインです。いままでは「LensCare」しか選択肢が無いに等しい状態だったので、結構大きなニュースだと思っています。

ダウンロード先

f:id:tasoba:20190730170401j:plain

以下からダウンロードできます。Mac & Win対応で、CC2019にも対応しています。

※2019年9月にPro版がリリースされました。これまで無料で利用できた範囲は変わらず無料で利用できるようです。

https://www.rowbyte.com/fast-bokeh

f:id:tasoba:20190730170729j:plain

操作パネルはこんな感じで、すっきりです。リンク先は英語なので、日本語で解説すると次のような感じです。

  • Blur Radius: ブラーのサイズ。増えるとボケます。
  • Depth Map Layer: Depth Mapという白黒の階調で奥行きを表現したイメージをここで指定します。
  • Invert Depth Map: Depth Mapの階調を反転します。普通は使わないと思います。
  • Focus Distance: どこに焦点を合わせるか0〜1の数値で指定します。
  • Repeat Edge Pixels: エッジを繰り返しかどうかの設定ですが「基本的にONにして」と書いてありました。

新たにProがリリースされ、仕様が少し変化

【2019.9.29追記】

現在、Pro版が販売されています。無料でも利用できるのですが少し注意点があります。

aescripts.com

Pro版で追加されたこと

Spherical Aperture Bokeh BlurとQuick Focus Pointの2つの機能が追加されました。

  • Spherical Aperture Bokeh Blurガウスぼかしでない高品質ブラー)
  • Quick Focus Point(距離でなく、画面上のポイントで直感的に焦点位置を指定できる)

品質面、使い勝手面でかなり向上しています。特に2つめの「Quick Focus Point」はストレスフリーな気が...。

下のGIF動画はPro機能の「Spherical Aperture Bokeh Blur」をONにして、同じくPro機能の「Quick Focus Point」を動かした結果です。はやい...。

画質はGIFなので無視してください。当然もっと綺麗なのでご安心を。

Quick Focus Pointのテスト

Quick Focus Pointの使用感。速い。
無料版はなくなった?

追加されたPro機能を利用しなければこれまでどおり、無料で使えるそうです。

無料とProの利用上の注意として、サイトに以下の記載があります。

  • Pro機能を利用する場合は、ライセンス登録が必要。登録しないと透かしが入る。
  • Pro機能を利用しない場合は、透かしが入らない。

つまり、「Spherical Aperture Bokeh Blur」「Quick Focus Point」の2つを使わなければこれまで同様、無料プラグインとして機能するようです。

【追記ここまで】

試してみた感想

Element 3Dで作成したモデルに設定してみました。

方法としては、Element 3Dの出力設定を「Z Depth」にし書き出したものを再びコンポジションに戻し、Fast Bokehから参照するようにしました。

f:id:tasoba:20190730163952p:plain

Fast Bokeh以外の方法として、「Element 3Dの標準ボケの場合」と「AE標準プラグインのブラー(カメラレンズ)の場合」も加え、3つを比較しました。

分かり易いように、ボケを強めに設定して検証しました。

Element 3Dの標準ボケの場合

f:id:tasoba:20190730164354j:plain

ぱっとみた感じ、あまりわからないのですが、奥と手前の輪郭付近で破綻が見られます。カメラが大きく動くとより顕著になりそうです。

ぼけている球体の模様にも破綻が感じられます。

Element 3Dの標準のボケは動作が速く、それなりに綺麗なので使い勝手がいいのですが、ここまで大きくぼかせない印象です。

AE標準プラグインのブラー(カメラレンズ)の場合

f:id:tasoba:20190730164659j:plain

全体的に嘘っぽいボケ感がでているので、この画質では使えない印象です。少しだけぼかすとかであれば、バレないのかも知れませんが、あえて使う必要もないのでは?と思う画質です。

Fast Bokeh for After Effectsの場合

Fast Bokeh for After Effectsの検証

許せるクオリティなのではないでしょうか?

しかも動作がかなり軽かったです。Element 3D標準よりも少し軽く、「ブラー(カメラレンズ)」とは比べ物にならないくらい軽いです。

ただ、ボケはガウスブラーのような簡単なものなので、絞り形状などをシュミレートするものではありません。若干リアルさに欠けるといえます。

とはいえ「使えるクオリティでしっかりボケる」「動作が軽い」という点でとても優秀だと思います。

個人的にAEでの3D表現で感じること

少し脱線しますがついでに。

AEは3Dが不得意と書きましたが、世の中に流れている映像の中にはAEで3Dを表現しているものが複数あります。AEは使いやすいですし、色々とプラグインがあるので、意外となんでもできちゃいます。 私自身、AE暦・Element 3D暦が長く、それなりに仕事で活用しています。

しかし忘れてはならないのは、「可能だからといって、必ずしも最適解ではない」ということです。AEの3D表現は複雑ですし、今はFUSIONとかBlenderといった手の出しやすい別のソフトがあるので、高度な3D表現をするなら、AEにこだわる必要はないと思います。

そういう点で「Fast Bokeh for After Effects」はAEに丁度良いスピード感で、サクサクと使えるプラグインだと感じました。

まとめ

「LensCare」を導入するまでの代用として、または協業などでプラグイン環境が揃わないプロジェクトなどで「Fast Bokeh for After Effects」は役立ちそうです。

何よりも、ボケの演出を諦めずに実現できるということ素晴らしいと思います。

是非試してみてください。